ラトゥールの名の通り”塔”をシンボルにイラストが印象的なメドック格付け第1級に君臨する5大シャトーの一つであるシャトー・ラトゥール。
ラベルに描かれている「塔」は14~15世紀に要塞として建てられたものが破壊され、後に「鳩小屋」として建てられたものが今日ラトゥールで見られる塔だと言われています。
17世紀には一部の畑でブドウ栽培をはじめ、醸造まで取り組むようになったのは「葡萄の王子」と呼ばれていたニコラ・アレキサンドレ・ド・セギュール侯爵がオーナーになった18世紀に入ってからのことです。シャトー・ラフィットも所有していた当時のセギュール侯爵はラトゥールをラフィットと統合します。しかし、1755年の彼の死をきっかけに領地分割が行われていき、ラフィットの一部であったラトゥールは、18世紀後半にはワイン造りに必要なすべての道具を揃えた独自のシャトーとして経営されていきます。
そんなラトゥールはメドック地区ポイヤックの南に位置し、ジロンド川の川沿いに多くの畑を有しています。約78haある畑の総面積のうち約47haを占めるのが”ランクロ”と呼ばれるラトゥールの中でも最も重要な一帯です。
土壌は水はけのよい大きめの砂利質の表土、そしてその下層には泥灰岩性の粘土質の地層が広がります。またジロンド川から放射熱、そして日中たっぷりと熱を吸収した砂利質土壌により”畑の過度の温度変化を防ぐ”という恩恵を受けています。その為、霜の被害も最小限に留め良質なブドウがしっかりと成熟されていきます。
またラトゥールは伝統的な手法と近代技術を融合させたワイン造りをすることで有名で、1960年代からは周囲に先駆け当時、管理が難しいとされていたステンレスタンク発酵を取り入れたりなどしています。その他、樹齢10年以上のブドウしか使用しないという徹底ぶりや、発酵は区画ごとに分けて行ったり、収穫量に応じてさまざまなサイズや形状のタンクをラトゥール用に特別に作るなど、こだわりの強さが伺えます。
シャトー・ラトゥールはハズレ年がないと言われるほど毎年、高品質なワインをリリースできているのは、細部へのこだわりとたゆまぬ努力の結果と言えるでしょう。
また、ワイン業界で大きな話題となったのが2011年、プリムールからの脱退です。プリムールとは、リリースするまでの長い期間ワインを販売することのできないシャトーにとって大きな負担を解決する仕組みとして取り入れられているシステムで、まだ瓶詰め前の樽の状態でワインを評価し、若干格安の価格でワインを販売する仕組みになっています。今やボルドーの殆どの格付けシャトーがこのプリムールでワインを販売しています。
しかしシャトー・ラトゥールは2011年のプリムールをもってこの販売方法から脱退しました。ラトゥール曰く「まだ樽の段階でワインを正しく評価することは難しい。きちんと飲み頃になるまで待ってからリリースしたい」との理由だからです。5大シャトーの中でも”最も力強く男性的”晩熟で長命”。ぜひお楽しみください。