ディスティレリ・ド・パリは、パリで何十年にも亘って愛されている家族経営の高級食料品店「ジュレス」のオーナー、ニコラ・ジュレス氏が2015年に「流行に乗ったありきたりのものを作るのではなく、ジンというスピリッツの可能性に挑戦し、これまでにない新しい世界を切り開きたい。」という強い思いで立ち上げたパリ唯一の蒸留所です。
蒸留所の建設が禁止されているパリでは、特例中の特例であり今後も新しい蒸留所の認可が下りることはないとも言われています。
基本的なアプローチにフレグランスの設計法を用いているのが大きな特徴。毎日パリのランジス市場に通って自ら原料を厳選するほか、レユニオン島から空輸で取り寄せるなどボタニカルに対するこだわりも大変強く、フレッシュボタニカルしか使用しないそうです。
通常ジンは一週間もあれば生産できるのが事実です(蒸留の工程に一日、加水をして瓶詰まで2~3日)が、ディスティレリ・ド・パリでは「すべては細部にある」をモットーに、ボタニカル選び、組み合わせ、加水の工程に長い時間をかけます。
加水においては、短時間で一気に水を混ぜると歯茎や舌にアルコールの攻撃的な刺激が残ることになります。最高の加水とは少しずつゆっくりと行うこと。毎日少しずつ、泡だて器を使って手作業で混ぜていくことで、アルコール感が刺さらない柔らかい口当たりが得られます。
斬新なボタニカルを駆使して個性を追求する現在主流のクラフトジンと一線を画し、全ての工程の細部にわたるまで、真摯に丁寧な作業を積み重ねることでしか完成することのない磨き上げられた味わいにきっと驚かされることでしょう。
心地良いパフューム香にナチュラルでふくよかな甘み、ニコラの目指すジンは、まさに「飲める香水」という表現が一番しっくりときます。
バッチ1
1917年にコティが発表した香水「シプレ」にインスピレーションを得て作られました。香水の構成要素をウッド、スパイス、フルーツ、フラワーの4つに分け、異なるそれら全てをつなぎ新しい香を紡ぐのがベルガモット。シプレは当時もセンセーショナルな素晴らしい香水でしたが、それ以降の調香法を決定づけたという点で100年後の今、その偉大さが改めて再認識されています。
バッチ1はこのままでも繊細で複雑なジンですが、さらに深い感動を呼ぶ背骨となる要素にフレッシュなコリアンダーの葉が使用されています。
トニック
トニックに求めたのは「ストレートで力強い」こと。ウッドとスパイスで構成されます。この商品にはキナ抽出物が既に入っているので、炭酸水で割るだけでシュガーフリーのジントニックができる点で革命的です。
ベル・エール
コンセプトは「レユニオン島のボタニカルだけを使う」こと。ベル・エールはボタニカルが採取される農園の名前で、パリまで空輸で直接調達しています。ニコラも初めてジンに使ったベチバーは香水のベースとなるイネ科の植物で、ウッディでエキゾチックなニュアンスを出します。時間がたっても強い香りが続き全体をまとめる重要な役割を担っています。