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シャトー・ムートン・ロートシルト(CHATEAU MOUTON ROTHSCHILD)

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1973年格付けの歴史の中で唯一、メドック第2級から第1級に格上げされた驚異のシャトーが、シャトー・ムートン・ロートシルトです。

1853年にイギリスの実業家ロスチャイルド(フランス語でロートシルト)家が当時「シャトー・ブラーヌ・ムートン」と、呼ばれていたシャトーを購入し、「シャトー・ムートン・ロートシルト」と名付けました。当時から素晴らしいブドウ畑だったにも関わらず、家族の誰もがブドウ栽培に興味を示しませんでした。しかし1922年、フィリップ・ド・ロートシルト男爵がこの土地に魅了され、ブドウ栽培を一生の仕事にしようと決めます。そして彼は65年間このシャトーの管理をし、強烈な個性と計画性、革新のセンスを発揮してムートンを一流シャトーの仲間入りをさせることになるのです。

1924年彼はそれまで行われていなかった「瓶詰め」をシャトーで行った先駆者となりました。さらに1926年には、今日では有名となった100mを超える巨大な貯蔵庫を建て、周囲の人々を驚かせました。そして1945年、フランスの解放を祝うため、彼はその年の”ラベルを相応しいデザインで飾る”という独創的なアイデアを思いつき、それをきっかけにミロやシャガール、ピカソ、ウォーホルなど数々の有名画家がラベルをデザインし、個性的なラベルコレクションの始まりとなるのです。ちなみに日本人で初めてラベルデザインをした人物は、パリ在住の洋画家である堂本尚郞氏です。「ムートン」はフランス語で羊を意味するので、日本が未年にあたる1979年のラベル制作を担当しました。

1962年には、ブドウ畑やワイン造りに用いられた貴重な品々を集めたワイン博物館をオープンします。ムートンは観光のメッカとなり、毎年何千人もの訪問客を魅了するようになるのです。

そして彼は、1855年に2級シャトーとして格付けされていたムートンを1級シャトーへと格上げするための運動を始めます。旧弊や既定の順位と戦うこと20年、1973年にシャトー・ムートン・ロートシルトは悲願であった1級シャトーと認められました。この時彼は、「われ1級になりぬ、かつて2級なりき、されどムートンは昔も今も変わらず」という言葉を残しました。時代を超えて続けてきたひたむきな努力と、1級に格付けされたことに甘んじることなく今後も最高のワインを生み出していこうという覚悟が、この一言から読み取ることができるでしょう。

1988年、偉大なフィリップは死去し、娘のフィリピーヌがシャトーを受け継ぎました。現在は彼女の3人の子供が共同経営者として活躍しています。

シャトー・ムートン・ロートシルトの畑は、フランスのボルドー地区のやや高地になっているオー・メドックの中のポイヤック村にあります。ポイヤック村は、シャトー・ムートン・ロートシルトを含めメドック格付けの1級シャトーを3つも有することでも知られていますが、小粒の砂利の混ざった砂質の土壌で、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適しています。その為ワインも、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率が最も高くなっています。また、低温マセラシオン(ブドウの色素やタンニンなどの成分を抽出させるため、果汁に種や果皮を漬け込むこと)や、フレンチオーク樽での熟成など、独自の手法でワイン造りを行っているため、見た目は濃い紫色で、ずっしりと重くタンニンがしっかりと感じられるワインに仕上がっています。長期熟成を経てさらに偉大なワインになるポテンシャルを含んでいます。

5大シャトーの中でも、最も豪勢なワインと言われているシャトー・ムートン・ロートシルト。是非お楽しみ下さい。

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