ボデガス・ヒメネス・スピノラは、スペイン南部アンダルシア地方へレスで極甘口のシェリー「ペドロ・ヒメネス」に特化した珍しいボデガです。現在のボデガの設立は1919年ですが、1729年にはすでにスピノラ家の先祖フェリペ・アントニオ・サルサナ・スピノラ氏が輸出をした記録もある、長い歴史を誇る家族経営の造り手です。現オーナー、ホセ・アントニオ氏で9代目となりますが、家族協議会と優秀なエノロゴによる品質委員会により、自ら課した厳しい基準に見合う「レベルの高いペドロ・ヒメネスだけをリリースする」というボデガの伝統は受け継がれています。品質最優先のポリシーは量を追求することを許しません。その為、年産一万本に満たないヘレス最小のボデガです。
シェリーの品質にとって最も重要な要素となるこの地特有の「アルバリサ」と呼ばれる土壌。この土壌は極めて白く、硫酸カルシウム・粘土・珪土に富み、湿度を保ち冬場の雨を地中に蓄えることで、夏の乾燥に備える一方、フロールの形成を阻害する鉄分などのミネラルが少ないのが特徴です。このアルバリサ土壌は、ヘレス・デ・ラ・フロンテラ、サンルカール・デ・バラメダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアの黄金の三角地帯、さらにトレブヘナの一角にあり、“ヘレス・スペリオール”といわれる最上区画となっています。
ヒメネス・スピノラ社の品質を語る上で欠かせないのが、「100%手摘みでの収穫、100%天日干し」です。極甘口シェリーを造るためには、収穫したブドウを圧搾にかけるまえに天日で干す作業があります。収穫と天日乾燥、さらに干しブドウを圧搾して天然の加糖を得る工程で出るロスは莫大な費用になる為、現在ペドロ・ヒメネスの生産では、一部天日干し・あえて全く天日乾燥ブドウを使わないことが許可されています。しかし、品質主義を貫くヒメネス・スピノラ社ではコスト度外視の「100%天日干し」を守っています。
また通常、味の均一化と安定を図るために行われている「補酸、酒精強化、冷却安定」。これらの作業を、ヒメネス・スピノラ社では一切行っていません。常に最高クラスのものをリリースする、というポリシーの下、生産は年間約8000本ほど。クオリティに対する自信の証しとして、全てのボトルにシリアル番号が明記されています。
今ではこの蔵元だけとなった100%天日干しを行うことで得られる天然の糖分とフレッシュな酸によるきれいな味わいが特徴であるヒメネス・スピノラ社のペドロ・ヒメネス。永遠に続くかのような複雑な余韻と他に類のない芳醇なアロマも是非お楽しみください。