「I.W.ハーパー」は、アイザック・ウォルフ・バーンハイム氏が創設しました。彼のイニシャル「I.W.」と親友フランク・ハーパーの名前を冠して1877年に誕生しました。
彼は、1848年ドイツのシュミーハイム(キッペンハイム)に生まれ、13歳から商社で見習いとして働き始め、掃除や配送、商品販売の方法、簿記や通信、財務などを学びました。そして若干19歳で故郷ドイツからアメリカに渡り、最初はペンシルバニアで行商人として働きますが、後に叔父を頼りケンタッキーへ移り、そこでバーボンと出会い人生を捧げていくようになります。
彼は、品質の悪いバーボンウイスキーが市場に流れている中、高品質なウイスキーの製造に注力します。そうして品質にこだわったI.W.ハーパーは高く評価され、1885年にニューオリンズで開催された万国博覧会において金賞を受賞し、世にその名を広めました。その後も世界中で開催されるさまざまな博覧会において金賞(ゴールドメダル)を合計で5回受賞したことから、現在の主要銘柄である「ゴールドメダル」という名前の由来になったと言われています。
当時、バーボンの熟成は4年から6年が最良という時代で、バーボンの長期熟成には意味がないといわれていました。しかし1961年に発売された「I.W.ハーパー12年」は、世界初の長期熟成バーボンとして販売された画期的なバーボンとして人気を博しました。
このバーボンがきっかけとなり、各社でプレミアムバーボンが造られるようになりました。「I.W.ハーパー」は、まさにその先駆者的存在になったのです。
この長期熟成を可能にしたのは、当時のレンガ造りの熟成庫にあります。
ケンタッキー州の気候は、夏は30度を超える暑さで、冬は氷点下まで気温が下がります。
寒暖差が大きいため、ウイスキーを寝かせると熟成や樽成分の溶出が進みやすく、渋みや雑味につながる成分が出やすいのです。
その点、レンガ造りの熟成庫であれば、季節を問わず気温が安定しているため、長期間かけて熟成がじっくりと均一に進めることができるのです。安定した温度の下で、長期熟成されたI.W.ハーパー12年は、日本でも1980年代~90年代にかけ爆発的なヒットを飛ばした商品で、1969年に世界で2000ケースだったものが、1991年には50万ケース以上を売り上げ、日本で最も売れているバーボンとなりました。
また、I.W.ハーパーはこれまでにない画期的なボトルデザインやラベルにある「シルクハットの紳士」というマスコットを作り出し、バーボンの田舎くさいイメージをスタイリッシュで都会的な姿に押し上げ、売り上げを伸ばしていきました。
シルクハットの紳士は、かつてアイザックが雇っていた優秀なセールスマンをモチーフに作られています。彼は非常に礼儀正しく、エレガントな振る舞いで顧客から信頼されており、ブランド認知に一役買っていた人物だそうです。
これほどまでに人気のあった「I.W.ハーパー12年」ですが、長期熟成原酒の安定的な確保が困難となり、さらにはコロナ禍の影響もあって、2022年6月頃に終売してしまいました。しかし、2024年7月頃に再発売され今回のボトルは再発売後のボトルとなります。
終売してしまい飲む機会を失ってしまっていた方や、もう一度素晴らしい1杯を飲まれたい方は、是非ご賞味くださいませ。